2016/03/28のASTRO-H(ひとみ)を撮ってみた
仰々しいタイトルを付けているが,これはド素人の宇宙好きが適当に撮影を行った結果である.もし検索から公式発表と勘違いされてこのページにたどり着いてしまった方は,ブラウザバックしていただきたい.(勘違いさせやすいタイトルで申し訳ありません.)
(3/29追記:画像があまりにも低解像度だったのでTwitterに上げた写真のURLを併記.タイトルも変更.予想以上にアクセス数が大きい)
先日26日,若林直美さんが福岡に公録をしにいらしたとのことで,福岡市民会館まで拝聴しに行った.すごく良かった(小並感).
さて,その公録に行っている間に宇宙関連では大変なことが起きていたようだ.JAXAのプレスリリースで,ASTRO-Hの異常が報じられたのである.
プレスリリースやアメリカのJSpOCの観測データ,ASTRO-HのTWE(軌道要素)データなどからASTRO-Hが何らかの理由で一部損傷し,速度が低下,きりもみ状態になりつつ何かを噴出している状態と推測できる(ソースはTwitterやらに転がってるので各自調べてほしい(投げやり)).
不謹慎ではあるが,錐揉みしている衛星を観測できる機会なぞそうそう無いので,個人で観測を行った.以下,観測過程と観測結果を報告する.
Heavens Aboveというサイトは観測地を指定してやれば,宇宙に存在するISSからデブリまでありとあらゆる衛星パス(衛星の地上からの見え方)を示してくれる.このサイトを用い,観測地からのASTRO-Hのパスを取得した.以下はその星図である.
そして,私が撮影した写真35枚を明比較合成した写真が次の写真である.
RX-100M2/28mm(35mm判換算値)/F2.5/ISO400/10sec*35枚=350sec(高解像度画像)
写真下部や上部に写っている線や点線は送電線や航空機である.
この中にASTRO-Hが光点として写っている.普通に見ても分からないので,以下にその光点の位置とそれを結んだものを示す.
赤矢印の先端部分に光点がある(高解像度画像)
光点を大まかに曲線で結んだ.上の星図とほとんど一致していることが確認できるため,光点はASTRO-Hのものと考えられる.
本来は
通信が途絶したX線天文衛星「ひとみ」。28日20時20分、詳細を確認するため500mmで拡大撮影。機体の破壊が心配されますが、8等級までの破片は確認できず。小刻みな変光が見て取れ、姿勢を崩して複雑にスピンしていることが考えられます。 pic.twitter.com/XpOuvD2JHD
— 三島和久・アニリン・レモンパスタ部 (@C6H5NH2) 2016年3月28日
や
今夜(3/28)20:20頃のASTRO-H HITOMI
— JR5EPQ”SHO” (@JR5EPQ) 2016年3月28日
EOS 60Da+f200mm F3.5 ISO6400 ガイド10秒を2枚合成
左下のシリウスの上方をひとみが6~7秒の周期で変光して飛翔して行きました。
#mysky pic.twitter.com/xeDFhMOt2X
のように,線として写るのだが,如何せん観測方向に都市部があり,光害が酷いため,写っていないようである(目視では3等星くらいが限度である).
しかし,目視観測の結果,光点が写っている部分では0.5秒ほど1~2等星級の点滅が認められたため,決して都市部では観測できないという訳ではなさそうだ.
以下に,光点が確認できた合成前の写真を掲載する.1枚目には1つ,2枚目には2つの光点がある.
RX-100M2/28mm(35mm判換算値)/F2.5/ISO400/10sec(高解像度画像)
撮影時刻:20:17:38~48(誤差+5秒以内・JST)
同上(高解像度画像)
撮影時刻:20:20:18~28(誤差+5秒以内・JST)
以上の観測結果より,ASTRO-Hが回転していることは事実と思われる.
さて,ASTRO-Hの今後が危ぶまれるが,現在JAXAをはじめとする関係者の方々が一生懸命通信を回復させようと努力しているはずである.現在ASTRO-Hの軌道は落ち着いていないようであるが,しばらくしたら落着き,通信も取りやすくなるだろう.その後損傷個所の確認や損傷拡大を防止する処理等を行い,致命的な損傷が無ければ,観測を開始すると思われる.
一旦飛ばしてしまったら二度と直接修理することが出来ない宇宙機は「冗長系」と呼ばれる予備系統が確保してあり,多少の故障では宇宙機の機能は喪失しないように作ってある.
通信が途絶してまだ3日も経っておらず,しばらくしたら通信が回復する可能性は高い.はやぶさの時は3億km離れた場所で46日間通信が途絶してもちゃんと帰ってきたのだから,数百キロ離れたところの(しかも条件が整えば目視すらできる距離である)衛星だって(困難だろうが)復旧できるだろう(希望的観測).
取りあえず現時点で「国民の血税が無駄になった」だの「見るべきなのは星ではなく国民」だの騒ぐのは時期尚早だし,仮に失敗したとしても,「失敗のデータ」というものはとてつもなく貴重なものであり,次の衛星運用に必ず活かせるはずである.
ASTRO-Hの早期復旧と運用開始を心から祈っている.