残念ながらお金を用意することができませんでした

カメラやらアイマスやら電波やら電気電子やらいろいろと書いていくやつ

ISS-SSTVを受信してみた話

 卒論ヤバいです(白目).

 現実逃避としてちょっと面白いイベントをやっていたっぽいので参加してみた.割と面白かったので紹介しておこうと思う.




ISS-SSTVとは

 ISS-SSTVとは,ARISS(Amateur Radio on the International Space Station)とNOTA(NASA On The Air)が行うSSTV(Slow Scan TV)のことである.ISSとはおなじみ国際宇宙ステーションのことで,そろそろ耐用年数がヤバいといいつつもなんやかんやで2024年まで運用が決定されている宇宙飛行士が乗ってる奴のことである.

 ISSにはアマチュア無線機が搭載されており,資格持ちの宇宙飛行士が余暇を使ってたまに交信している.運よく交信できればQSLも交換できるらしい.

 今回参加したISS-SSTVというのはISSに搭載された無線機からSSTVを2日間ほど垂れ流し,それを地上の人達が受信するイベントである.受信したSSTVをデコードし画像を専用のフォームにアップロード,申請すれば電子アワードが貰える.SSTV自体は狭帯域FMで発射される為広帯域受信機があれば十分受信できるが,専用のソフトを用いると画像に変換できる代物である.わりとすごい.




ISS-SSTVの受信方法

 割と誰でもできそうなので参考に受信方法を紹介しておく.

1.広帯域受信機と録音環境を用意する.

 ISS-SSTVは大体145.8MHzで送出されるため,狭帯域FMが復調できる広帯域受信機が必要となる.アンテナは八木が用意できるのがベストであるが,指向性が狭すぎるとISSを追っかけるのが大変になるので通常のホイップアンテナでよいと思われる.今回は安心と信頼のSRH789を使用した.

 また,受信した信号をデコードするためにPCソフトを使う場合は,録音環境も用意しておく.無線機から直接PCに音声出力できる場合は必要ないと思われる.ワイの場合はVX-8 -> CT-131(マイク端子変換ケーブル) -> WM-PROT録音ケーブル -> Walkmanで録音した.VX-8に直接録音ケーブルを接続するとインピーダンスが高すぎるようでうまく認識してくれなかった為,CT-131を介して接続した.

 ちなみにスマヒョではアプリでSSTV信号をデコードできる代物もあるらしいが,今回は使用していないので割愛する*1

2.場所の選定

 ISS-SSTVは145.8MHzで送信される.144MHz帯は多少回折があるものの,狭い場所への回り込みには期待出来ない[要出典].そこで,受信場所としてはやはりISSからの見通しが取れる周囲が開けた場所が一番いい.

 しかしながら,近所の公園でアンテナを振り回すとお巡りさん案件となる可能性もある.「盗聴器の調査です」と言い張ることもできなくはないだろうが,厳しいものがある.ワイも近所にはバイト先の人がたくさんおり,見つかりたくはないため自宅のベランダから受信を行った.

 そこで,自宅からもしっかりと受信できるように,次の項目でしっかりとパスを確認しておく方がいいだろう.

3.ISSの通過パスを調べる.

 ISSはおよそ1時間半で地球を1周するくらいには高速で移動している.当然地球の反対側に居るISSからの信号は拾えないため,ISSが自分の居る場所の上空に居るときにアンテナを出さないといつまで経っても受信できない.

 そこで,Heavens-AboveというサイトとOrbitronというソフトを用いる.

 Heavens-AboveもOrbitronもさまざまな衛星が追跡できるソフトである.前者は通過パスの割り出し,後者はリアルタイムでISSがどこにいるかを割り出すのに使う.

 前者のサイトにアクセスし,右上の「観測地点を設定」で現在地を打ち込み,衛星>注目すべき衛星の10日間の予測>ISS(国際宇宙ステーション)を開くと,ISSの通過「可視」パスが表示される.

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Fig.1 Heavens-AboveのTop画面

 ここで注意すべきは,「可視」パスはISSに太陽光が反射して目視で光点として確認できるパスのことであり,受信は不可視パスでも出来るということである.

 つまり,可視だけではなくすべてのパスがチャンスである.よって,「含まれる通過」を「全て」に変更する.こうすると,仰角が10度以上になるパスが全て表示できる.また,日付をクリックすると星図としてパスが表示されるため,どういう方向にISSが通過するかを事前に確認しておくとよい.自宅から受信する場合は,ISSが開けていない方向(e.g. 自宅により見通しが取れない方向)を通過する場合はあまり期待しない方がいい.

 Heavens-Aboveで時間帯を確認したら,その時間まで待機する.

 パスに入る前に,Orbitronを起動して手元で見れるようにするとよい.詳しい使い方は省略するが,ローター/無線というタブでリアルタイムの方位角と仰角が確認できるため,手動追尾する場合はかなり役に立つ.また,ダウンリンクの周波数を指定するとリアルタイムのドップラーシフトも計算してくれるので,受信ステップが細かい無線機を持っている場合はそれに合わせて調整することができる.

4.受信

 時間になったらいよいよISS-SSTVの受信に入る.環境にもよるが,ISSの仰角が5度を超えないと電波が入ってこない感じだった.また, スケルチは切っておいた方がいいと思われる.ISSが真上に居るときはかなり強い信号が入るが,仰角が低いとあまり入ってこない印象だった.

 粘り強く受信を続けると,「ピーギャラピーギャラピーギャラピーギャラ…」というデジタル信号らしき物が入ってくると思われる.それがISS-SSTVの信号である.聞いた感じでは2分送信->2分休止->2分送信…という感じで送信されているようなので,周波数を合わせても聞こえないという場合は2分程度待つと引っかかるはずである.音声が引っ掛かったら録音しておく.

5.デコード

 デコードにはMMSSTVを使用した.特に設定を弄らなくてもデコード出来るっぽいので嬉しいが,1つだけ問題がある.それは,PCのマイク入力から音声を入力しなければならないということである.

 3.5mmのオスーオスケーブルがあるならWalkmanから直接マイク入力にぶち込んでも良かったが,あいにくすべて研究室に置いてきてしまっていたため,代わりにVB-CABLEなるものを使用した.これで再生デバイスVB-CABLE INPUTに,録音デバイスVB-CABLE OUTPUTに設定し,適当なソフトでmp3を垂れ流せばデコードできる.

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Fig.2 MMSSTVのデコード画面




アワード提出

 初めに,Submission Pageで画像をアップロードする.ARISS SSTV Award - rules によれば画像は十分に識別出来ればよく,画像の一部でもOKだそうだ.

To get this award one should receive and decode at least one picture in the session. The quality of the received image does not have to be perfect, but good enough to be able to identify. The picture does not have to be full. It is acceptable to send just some part of the picture as well.

 取りあえず以下の画像のコールサイン抜きverを送ってみた("Clean"な画像じゃないとダメらしい).現在(2019/02/11 01:08JST)のところボランティアのレビュー待ちだそうだ.

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Fig.3 一番きれいに受信できた画像

 2019/02/12 Update 無事承認された.ここの"Find all submissions by callsign"にJE6UKFを打ち込むと出る.

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Fig.3.1 Accepted

 フォームも埋めて提出してみた.アワードは24日までにはメールに届くようだ.届いたらここに追記するすす.

 2019/02/12 Update もうアワードが届いた.仕事早すぎィ!!

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Fig.3.2 人生初アワード




まとめ

 いかがでしたか??(クソまとめアフィ回避検索回避)

 局面持ってるくせに受信しかしない勢としては,ISSからの電波を受信できるのは割と感慨深い.また,普段は聞いてても面白くないデジタル信号がデコードできるとめちゃくちゃ面白いということに気づいた.最悪広帯域受信機とスマホさえあれば十分にアワードが狙えるという敷居の低さもかなり魅力的ではないかと思われる.

 最後にハードルを下げるために没画像を上げて終わりとする.さぁ寝て起きたら卒論を書くぞ….

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Fig.4 初の受信結果.割と綺麗にデコード出来て感動した.

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Fig.5 Fig.4と同一パスの後半分.一旦送信がストップしたため混乱していろいろ弄ったらノイズが入りまくった.

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Fig.6 2回目のパス.マンションに遮られる北側を通過したため死亡.

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Fig.7 3回目のパス前半.これもマンション北側だったためノイズがすごい.

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Fig.8 Fig.7の続きの一部.途中全く拾えなくなり2つに分かれてしまった.

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Fig.9 3回目のパス後半.後半はマンションの陰から出てきた為多少まともに映っている.

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Fig.10 3回目のパスの前半.この時は初手から見通しが取れていたので綺麗に受信できている.この後がFig.3である.